グランジ4年ぶりの単独LIVEを見に行ったら、「LIGHT & NATURE」という猛毒に侵された話

11月18日にグランジの4年ぶりとなる単独ライブ「LIGHT & NATURE」を観に行った。公演から数日経ってもグランジ熱に侵されているので、この狂気の熱量を記録しておきたいと思う。

 

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公演当日開場2時間前。渋谷ヒカリエで合流した私と友人は、ちょっとクセの強い楽屋見舞い(トリュフ味がうまいスナック菓子)を片手に電車に揺られていた。

 

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友人も私もお笑い好きで、めちゃイケ世代。お笑いライブを観に行った経験もあるが、「ここ最近は観に行っていないね」「そもそも単独ライブってあんまり観たことないや」なんて話をしていたら新宿に着いていた。

 


「ほぇーここがルミネtheよしもとか」

「東京のルミネ来たことなかった」

 


とかくっちゃべりつつ、受付のお姉さんにお菓子を渡して頂けるようお願いしたらとても感じよく対応してくれた。

その後一旦会場を出て、近くのケンタッキーフライドチキンのフォレサンドで腹ごしらえし、いざ会場へ。

 

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混み合っている受付の近くでお笑いトリオ「パップコーン」の芦沢ムネトさん(SOLのあしざわ教頭)や私が勝手に神と崇め奉っているナスカのお2人(欅坂46「エキセントリック」や乃木坂46「ジコチューで行こう!」の作曲を担当されている。とてもお優しく多分本当に神)の姿をお見かけしたので、ご挨拶をさせていただいた。

 


職業柄こういうところだけは目ざといというか図々しいなと思いつつ、「神とお話ししてしまった」と内心Hi! Hi! Hi! Hi! Hi! ハイテンション状態で着席。ぶっちゃけナスカのお2人と何を話したか覚えていないレベル。それぐらいど緊張の挨拶だった。例えるならば映画「響」の「あなたの作品好き!」状態のひーちゃんだが、あれは平手友梨奈さんがかわいいから成立しているのであって、野性のナスカファンのアラサー女がやると結構ヤバイ。申し訳ないことをしたと思うが、ナスカさんの素晴らしさについては別の機会に改めて語りたいと思う。

 


そんなことはさておき、程なくして会場に軽妙な音楽が流れ始める。神(ナスカさん)が作曲されたオープニング曲である。何このワクワク感。危なっかしい計画にも通じるようなテンポ感で「永遠に聞いていられるわ」と聞き入っていたら、舞台上に女装した五明拓弥さんがいた。グランジ4年ぶりの単独ライブが幕を開けたのである。

 


オープニングコントは遠山大輔さん扮するダメな弟を持つ姉(五明さん)が、勝手に芸能事務所へ履歴書を送るネタ「アイウエオ企画」。業界人なら知っていると思うが、高橋英樹さん、高橋真麻さん親子が所属する実在の芸能事務所「アイウエオ企画」を絡めたネタである。一発目からとんでもねぇものをぶち込んできたと思っていたのも束の間、畳み掛けるようなボケツッコミがくどくない感じで展開されていく。面白い。

 


特筆すべきは五明さんの演技力で、あの顔、あの高身長なのに途中から三十路女に見えてくるのだから恐ろしい。あと五明さん痩せた?

 


その後登場する大さん(椿鬼奴さんの旦那さん)が完璧に高橋英樹さんになりきっていたのもよかった。見た目は大さんでも、私たちの目には高橋英樹がいるようにしか見えなかった。

「これがグランジですよ」と来場者をグランジワールドに誘い込みつつ、「あーもうちょっとだけ観たい!」と思わせる絶妙な尺で1本目のネタが終わった。物事なんでもちょっと足りないぐらいが丁度いいのかもしれない。

 


そして超スタイリッシュなオープニングVTRがあって2本目のネタ「すぐ帰ろうとする」

がスタート。定番のすれ違いコントにリズムネタ要素をプラスした作品で、大さんのぶっ飛び変人ぶりとそれに応戦する五明さんのいかれっぷり、ただただドン引きして役に立たない遠山さんのクソ彼氏ぶりというカオスな構図がどこを切り取っても面白おかしかった。この世界観はグランジにしか作れないと思った。あと重ねて音楽が最高だった。

 


つなぎVTRではそれぞれが狂った意気込みを語る中、大さんはただ一人奥さんである椿鬼奴さんのNewアルバムを買ってくれるようにお客さんにお願いしていた。根拠はないがMステで鬼奴さんの歌声を聴く日は遠くないなと思った。ラジオリスナーのみんなは是非鬼奴さんのリクエストしてあげてほしい。

 


その後は「入ってんじゃん」「カントリーロード」「朗読会」「チンコ卓球」と毛色の違うネタが展開されていく。

一押しは「カントリーロード」で、五明さんと大さん扮する老夫婦が名曲「カントリーロード」の音楽をバックに自転車を漕いでいるというなんとも爽やかな世界観で始まったかと思いきや、遠山さんとの出会いをきっかけにこの老夫婦のとんでもない過去が明らかになっていくというもの。

 

 

セリフはほぼなく、英語に空耳するような日本語で説明があるのみ。それでいて舞台上にいる演者の晴れやかな表情やスライドに映し出される写真の哀愁がなんとも面白おかしく、思わず吹き出してしまう。グランジ、こういうのもできるのか。と感じさせる1作だった。個人的にはこれが一番好き。

 


今回は暗転の間に展開されるVTRもとても面白かった。特にフジテレビの人気ドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」のパロディー「校長、39歳の一人暮らし」は前編後編に分けられた力作で、SOLの収録中に欅坂愛を語るとーやま校長や、ラジオ仕事終わりにライブDVDを観ながらひたすらセブン-イレブンのスイートポテトとホットビスケットを過食する遠山大輔39歳の日常が描かれている。

 


余談だが、以前本家の番組の総合プロデューサーを取材したことがあるだけに、冒頭から肩の震えが止まらない。無駄に細かい要素を寄せてきているのでYouTubeなどに無断転載すればきっと本家と勘違いされるクオリティー(褒め言葉)。

参考:なぜ“北九州監禁殺人事件の息子”に取材できたのか 「ザ・ノンフィクション」チーフプロデューサーが語る、踏み込める理由

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1711/15/news086.html

 


またこのVTR収録が行われたのは10/31のハロウィンだったらしく、写り込んでいるニュースZEROではキャスターが「渋谷センター街で火災」のニュースを取り上げていた。

 


10/31は私がまさに渋谷センター街でハロウィンの取材をしていた日で、取材中にそのビル火災が発生したので猛ダッシュ渋谷センター街を駆け抜けた日でもある。もうなんだか色々な感情が相まって笑いが止まらない。隣を見たら友人もビル火災のくだりで「(例の火事じゃん!笑)」と私を指差して笑っていた。火災は不幸なことで笑うのは不謹慎と分かっている。しかし多分この瞬間グランジのネタと関係ないところで笑っているのは私たちなんだろうなと思ったら余計に面白かった。ごめんなさい。

 


そしてアンケートタイムを経て最後のネタ「サスペンス in ハワイ」に突入。マリッジブルーをテーマにハワイでの結婚式に波乱が巻き起こるカップルと周囲の人々を描いたネタなのだが、新郎新婦はもちろん、新郎の友人、新婦の友人、新婦の弟、新郎の母ととにかく登場人物が多い。

 


しかしグランジはご存知の通り3人組。出番のたびにカツラをかぶったり衣装を大替えするのは難しい中、どうしたか。彼らは今回のライブのイメージカラーとなっている「青」「黄色」のシャツを羽織ることでこの問題を解決してみせた。

 


黄色いシャツなら女性、青いシャツなら男性と今本人が演じているキャラクターが男性なのか女性なのかを視覚的に分かりやすくすることで、お客が「今誰やってるんだっけ」と考える手間を取り除いたのだ。これにはただただ驚いた。コントに演劇的なテクニックを持ってくるのはやはり彼らが熟練したコント師だからなのだと感じた。

 


最後の最後までしっかりと笑わせてくれたグランジの約2時間のライブが終わった。会場の外でアンケートを書いているとずらーっと写メ会待ち(グッズを買うと一緒に写メを撮らせてもらえる)のお客さんが長い列を作っていた。友人と何が面白かったかなどを語り合う中2人とも共通していたのが「2時間も経っていたのか」ということだった。

 


これまで時間を忘れるほど熱中してコントを見たことはなかったし、失礼を重々承知で言うと、実はグランジがここまで面白いと思っていなかった。というのも私は過去にお笑い賞レースの仕事に携わっていたことがあり、グランジのネタをいくつか見たことがあったからだ。

 


藤崎マーケットや2700といったリズム系漫才師が人気を博していた2000年代、オールザッツ漫才などでは和牛、スーパーマラドーナspan!ウーマンラッシュアワーらと共にグランジ足切りラインで消えていた。

 


しかし足切りにはかかっても得票ポイントは少なくなく、好みが分かれているというよりは決定打にかけているのではないかというのが当時の正直な心境だった。

 


それから時間が流れ、私はテレビマンを辞め、視聴者側になった。そしてふと流れていたコント番組でグランジを見かけた。法要に関するネタをやっているグランジはめちゃくちゃ面白かったし、何より10年前と変わらぬ情熱でコントに挑んでいる3人はかっこよかった。この人たちのライブが観たいと思ったものの、単独ライブはここ4年開催されておらず勿体無さを感じていた。

 


そんな折訪れた単独ライブ開催の機会。今回劇場に足を運ぶ機会を得て本当に良かったと思う。そして最高の2時間を汗だくで届けてくれたグランジに声を大にして「面白かった」と伝えたい。本当に面白かった。

 

バラードもあって、ロックもあって、ラップもある。「LIGHT & NATURE」はグランジ4年ぶりのアルバムのようなライブだったのかもしれない。アルバムは聞き込んでこそアルバム。ぜひ映像化を期待したい。


東京から岡山にフライトする1時間20分で書きあげた感想の為、色々と読みづらいところもあるかもしれないが、とにかく記録に残すことが大事と筆を置く。