権利守らずして、推しの幸せなし 「SNSへ芸能人の画像を転載するのは何がいけないんですか?」に対する反応と問題点‪

 10月30日、私の質問箱に「SNSへ芸能人の画像を転載するのは何がいけないんですか?」という主旨の質問が届きました。この質問に対して回答したことをきっかけに、SNS上での著作権著作隣接権、肖像権といった「権利」に関して、様々な議論を呼んでいます。

 こうした堅苦しい法律関係について、特に若い方が真剣に議論して下さる機会というのはそうそうないので、これまでの経緯や話題になったことで起きたこと、問題点などを記録に残しておこうと思います。

  なお、時系列がそこそこ長いので、興味のない方は私が言いたいことをまとめた【最後に】まですっ飛ばして頂けますと幸いです。

【時系列】

 まずは時系列で「SNSへ芸能人の画像を転載するのは何がいけないんですか?」に回答するまでを箇条書きにしてみます。


(1)「なぜ画像等の無断転載をしてはいけないのか」という質問が私の質問箱に届く

(2)質問に対して回答‬(回答内容は一般論であり常識的な知識です)‬

(3)回答が反響を呼び、一部の人がアイコンやヘッダーを変更するに至る

 (※)回答の内容については、ツイートしている通りなので、画像を下記に添付しておきます。

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【その後起きたこと:いいこと編】

 では次に、質問への回答後起きたことと、その補足を箇条書きでまとめます。

(1)識者が回答について補足してくれる

 Twitterには文字制限があり、かつ、画像で行った回答も端的なものですから完璧ではありません。そんな中、新聞社の記者さんやWebライターさんなどが私の回答で足りていないところや正式にはどういう法律の名前なのかといった部分を補足してくれていました。これについては大変ありがたいことだと思いますし、皆さんも識者の色々な見解を知るきっかけになったと思います。

 

(2)Abema Newsからツイートと画像を紹介したいという連絡が来る

 ツイートが2000件程度RTされたころに、Abema Newsさんから連絡が来ました。内容は10月31日の放送で、当該のツイートと画像を紹介したいというもの。結果的に北朝鮮がミサイル発射を発生し、放送日差し替えとなりましたが、一般メディアの目にも留まる程度に話題を呼んだことが分かりました。

 

【その後起きたこと:なんだかなぁ編】

(1)私が肖像権・著作権の侵害等についてやめるよう求めているという情報が拡散

 ツイート投稿から現在に至るまで、私としては「各権利についての理解を深めてほしい」という姿勢で、そのようなことは個人として強く求めていないのですが、複数回「Kikkaさんがダメだって言ってた」というツイートを目にしました。なぜこのような意見が見られたのか、次項に続きます。

 

(2)大量に届いた質問で質問箱がパンクし閉鎖

  「これは大丈夫ですか?」「こういう場合はどうなりますか?」という質問が数十件~100件近くきました。全員に差異はあれど、ほとんどが重複質問だったので、回答するのには相当苦慮しました。ぶっちゃけて言うと「もう答えた」質問ばかりです。

 しかし、一般的/常識的な内容とはいえ、個別に回答していくことよって、私が正解か不正解かを決める“先生”のような立ち位置となってしまい、これが後々「Kikkaさんがダメだって言ってた」と反発を生む要因に一つになったのではないかと考えています。

 ただ回答をよく見て頂ければ分かると思うのですが「やめておいた方が良い」「推奨されない」といった表現を用いていることがほとんどで、厳密に「法令違反なのですぐ改めましょう」といった回答をしていることはなかったと思います。

  いずれにせよ想像をはるかに超える量の質問が一斉に寄せられたことや、それに回答することでTLが回答だらけになってしまうこと、何度答えても同じ質問が寄せられることなどこれ以上質問箱を続けるメリットがないと判断し、質問箱を退会・閉鎖するに至りました。

 

(3)意味はわからないけれどもとりあえずアイコンを変更し、一定期間が過ぎたら元のアイコンに戻す予定だいうツイートが多発

 これが最も理解できない投稿でした。「周りがやっているから」という理由だけでアイコンを一時的に変更しても、結局将来的に権利侵害を行うとわざわざ予告をしているのです。分かりやすく言うと、「周りがタバコをやめて言っているので禁煙します。でも明後日からはまたタバコを吸おうと思っています」と宣言しているようなものなのです。

 もし仮にそんな宣言をしている人を見かけたら、普通の人は「なぜそんなことをするの?」「一時的なことなのなら別にやめなくていいんじゃない?」と聞くと思います。

 ただ今回の場合は権利侵害という難しい問題が絡んでいるので事態はそう簡単ではありません。私が10月31日にツイートした下記のメッセージも本質から外れているのでは? という指摘を受けるに至り、11月1日に削除しました。

「しばらくしたらアイコン戻す予定w」って言ってる方何人か見ましたけども“自分の意思”がないのかなぁ。
別に変えたくなきゃ変えなくていいと思うんですよね。周りに流されて変えました!と表明するのはちょっと違う気がするなぁ。というネット老人会正会員の意見です。

 このツイートで何が言いたかったのかというと、本質が理解できていないとまた同じことを繰り返すので、「自己責任で権利侵害を続ける」という極めて意思の強い方は特にこの流れに乗らなくてもいいのではないですか、ということです。年齢差はあれども、みなさんSNSを利用するくらいには大人なわけですから、自己判断できると思うのです。

 一部を除き、著作関連の権利のほとんどは「親告罪」です。しかしながら日本では2018年12月30日に「著作権法における非親告罪化」について法改正が行われました。具体的には「行為の対価として財産上の利益を受ける目的」と「(有償著作物等の提供若しくは提示により)著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的」について、親告罪ではなくなったという事です。

 これを知ってもまだ権利侵害を続けたいと言われたら、「自己責任で」というほかありません。ただ「大手芸能事務所が個人に権利侵害の申し立てするわけはないので、どんどん権利を侵害していい」という事にはなりません

 また海賊版サイト「漫画村」事件で明らかになったように、対個人であっても企業が権利侵害について被害を申し立てているケースは皆さんが思っているよりもはるかに多いですし、過去にも記事になっていますが、無断転載を行った者が権利者に訴えられて90万円を支払ったケースも存在しています。そこまでのリスクを負って権利を侵害するという意図が私にはやっぱり分かりません……。

 

(4)拡散しているツイートの内容(引用RTなど)は肖像権等の権利を盾にしているが、本質的には「ねとらぼが宣伝を円滑に行えるようにうまく丸め込んだものではないか?」という意見が散見される

 今回の質問者はねとらぼとは全く無関係の方で、たまたまきた質問に対して、私が丁寧に回答したに過ぎません。引用RTはあくまでも「権利侵害をせずにツイートできる一番オススメの方法」と紹介しただけなので、引用要件(サイト名明記、URLの明示、画像を加工しない等、詳しくはググってください)を満たすなど別の方法を検討していただくといいのではないかと思います。

 ただ重ねてになりますが個人的には法人個人を問わず、引用RTがオススメです。便利なものはどんどん使って行くといいと思います。

 

【ツイート拡散で浮かび上がった問題点】


(1)正義感にかられた自警マンの出現
 ツイートを見た正義感の強い人が、権利侵害者に対して執拗に私のツイートを引用した上で投稿を削除するように迫るなどし、トラブルが発生しました。正義感の強さについては理解できますが、こうした行動は本意ではありません。私は人に対して「アイコンを変えろ」だとか「こうしろ」とは言っていないのです。あくまでも個人が自己責任で自分の考えを貫くことを尊重します。
 なお一部私の投稿を元に過激な投稿を繰り返していた方、ツイートのスクリーンショットを無断使用していた方に対しては、個別に連絡し、現在法的措置を含めた話し合いを行なっています。削除したからOK、ということではなく、「○月●日~×月■日まで権利侵害を行っていた」という事実は消えず、この責任は負うことになります。


(2)権利者から申し立てがなければ権利侵害はグレーゾーンでセーフという意見が出てくる
 前述の項でも触れましたが「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とか「集団万引き」とかの心理に近いのかなと思います。法律で禁じられているから、という以前にモラルの問題です。個人的には「バレなきゃOK」の精神は快く思いませんし、アイコンに他人を使用して発言することは「著作者人格権の侵害」にあたる可能性があるので本当にオススメしません。

 例えば下記のツイートの状態のとき、あなたは黙って見逃してあげるのですか? ということです。

 トラブルを回避するという観点では、やはりルールや法律を守った方が良いのです。


(3)正論を言われたせいでSNSが使いにくくなったという意見が上がる
 何事にもルールがあります。画像を無断転載することが本当に応援になるのか。今一度よく考えていただければと思います。また権利侵害をしている人の大多数が「ダメなことなんだよね」「いけないこととは分かっているけど」とツイートしていました。ダメなことなのだと分かっているのなら、外野にとやかく言われずともやるべきことは見えていると思います。

【最後に】

 色々とお話してきましたが、私の言いたいことはこれだけです。

  権利守らずして、推しの幸せなし。

 皆さんにはいわゆる“推し”がいますか? 例えばその推しを応援しようと思ったときに、どんなことができるでしょうか。グッズを買う。SNSのコメントで応援する。色々な方法があると思います。

 近年ネットの発達によって、一般人と芸能人の距離が縮まったり、「遭遇情報」といった感じで、芸能人の目撃情報を目にする機会が増えてきました。では、「本人に直接応援の気持ちを言いたいから遭遇情報をもとに待ち伏せてやろう!」という人がたくさん出現したらどうなるでしょうか。自称ファンが海賊版サイトで音源を落としまくり、CDが売れなくなったらどうなるでしょうか。

 

 推しは次第に活動が出来なくなると思います。

 

 芸能人だからプライバシーはない。学生でお金がないから海賊版で十分。こうした意見の人がいるのは事実です。でも様々な権利が守られているからこそ推しが輝いているのだということを心の隅っこに置いていて頂けたらと思うのです。

 今回発生した「権利侵害のアイコン変更ブーム」に関して、気付いた方が行動に出たというのは素晴らしいことだと思いますし、大多数の人は問題点の本質に気付いてくださったと思います。一方で私の言葉足らずであったり、正義感の強い方が「権利侵害をやめてください」と言いまわるといった行動に出たりで、マイナスの側面が生まれたこともありました。

 しかしながら総合的に考えると、いろいろな方が色々な見解、意見を述べるきっかけとなった「SNSへ芸能人の画像を転載するのは何がいけないんですか?」は非常に良い質問だったのだと思います。

 

 アーティストや作品作りをするクリエイターにとって、「成功」とは色々な形があると思います。私は「○○のファンはすごくマナーが良いね!」という話が出るのも「成功のひとつ」だと思っています。自分が推している作品・グループにとって何ができるか、自分自身も改めて考えたいなと思いました。

(Kikka)

NYLON JAPAN読みました? 私は読みました。

 NYLON JAPAN(ナイロン ジャパン) 2019年10 月号の平手友梨奈さんインタビューを読みました。

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NYLON JAPAN(ナイロン ジャパン) 2019年 10 月号(Amazonより)



 読むだけで声が聞こえてきそうなインタビューというのは本当に貴重なのですが、今回のインタビューはまさにそれ。
今年5本の指に入る素敵なインタビューだと思います。

 なんてったって時代をときめくトップアイドルを取材するわけですから、多くのインタビュアーは一種の気負いというか、緊張というかを抱えてインタビューしているんだと思います(数少ない経験ですが私もそう)。

 どうしても質問内容が「それ○○で答えたよ~」とか「またそれか~」という感じで似通ってしまうのもある意味準備しまくった結果だと思うのですが、今回のインタビュアー・石井美輪さんは、これまでとは違う角度で的確かつ柔らかい質問を向け、平手さんの回答をうまく引き出しているのが印象的です。

 なぜ今回のインタビューに新鮮さを感じたのか。それは、平手さんの回答を膨らませるスタイルで次の質問に進んでいるからなんですよね。

 もちろんこうした手法を取り入れているインタビュアーさんは数多くいらっしゃるのですが、例えば私の場合、どうしても時間の関係で深掘りできなかったり、事前に考えた「想定質問」を優先してしまったりして、相手の回答が端的になってしまうということが往々にしてあります。それはやっぱり自分の都合で「こんな感じだろう」と回答内容を期待している様子が取材相手に伝わったり、取材相手に緊張がうつってしまっていたりするからなのかなと、改めて反省しました。

 話をNYLONに戻します。今回で言うと1つ目の質問は「~~してもいいですか?」のトーンで優しく始まっているほか、途中で平手さんの回答に「うん」という言葉が出てきます。ここ4年、欅坂46に関係する取材VTRや記事をたくさん見てきましたが、この「うん」という言葉が出てくるコンテンツはほとんどの確率で面白いです。今回は気心が知れたスタッフさんに囲まれていたということもあり、終始リラックスした雰囲気での撮影だったということが記されていましたが、これがめちゃくちゃ良く作用したんだろうなと思いつつ、ナチュラルな「うん」を引き出したプロインタビュアーのすごさを思い知りました(と思っていたら大久保さんの「食とエロス」の担当をされている方でした。それはすごいはずだ……!あれも超おもしろい!)。

 日々色んなジャンルの記事を読んでインタビュー手法の勉強をしまくっている私ですが、いつかこういう“現場の空気が伝わる記事”が書けると良いなとすごく参考になりました。量より質。質のある量を書かないとね。

 

 ここからはしょうもない余談。インタビューの中で「あれ?」と思うことがいくつかありました。「不眠」「ワーカホリック」「好きなものを深堀りするトーク大好き」「メンズしか着ない」「襟付きの服ばかり着る」「ブラックコーヒーが飲めない(8月31日18時45分追記)」。平手さんと私、ひょっとしていくつか共通点があるのでは?(「おい黙れ」と言われると思うけどもうちょっとだけ喋らせて……笑)。

 例えば「占い師/預言者」のくだりですが、私も言われることがあります。職場で使ってるチャットでも最近言われたばかりです。

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職場で占い師呼ばわりされる私(決して褒められているわけではない)

 気にしてない風に見えてめちゃくちゃ人のこと観察しちゃってるんだろうか……そんなつもりないけど(笑)。とはいえ、全然違うところもあります。私は比較的よく怒るのですけれども、平手さんは寛容。平手さんはかわいいけど、私はそうじゃない。当たり前ですが、実際は似ていないところの方が多いのです。でもやっぱりちょっと共通点が見つかるとうれしいよね。

 

 なんとなく私は大人(というか、知った風にする人)が苦手で、会社でも常々「もっと大人になりなさいよ」「社会とは……」と言われるのですが、やっぱり自分の信じる正義があるから、「この人たち(大人)とは違うんだな」って思うことも少なくありません。でもそういう大人の中で暮らしていかないといけないので、「合わせることの大事さ」「相手の都合を考えることの大事さ」みたいなものを20代後半にして今やっと学んできています。大人になってきたんでしょうか。

 とはいえ、酷いことを言ったり、いっぱいフラッシュを炊いて相手の嫌そうな顔の写真を撮ったり、プライベートに踏み込んで記事を書くような大人には絶対なりたくないし、いつまでたっても理解できないけど。

 すごく脱線してしまいましたが、最後にもう少しだけ。今回のインタビューで出てきた言葉で、「これが最後になってもいい」というくらいの気持ちで挑んでいる――というのがありました。これは欅坂46の振り付けを担当するTAKAHIROさんの著書「ゼロは最強」でもTAKAHIROさんの実体験とともに紹介されている言葉です。

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TAKAHIROさんの著書「ゼロは最強」(Amazonより)

  私も小さいころから、尊敬する恩師に「これが最後の演奏になるかもしれないと思って弾きなさい。弾けないなら弓を折りなさい」と言われて育ちましたが、今回のインタビューでこの言葉が出てきたということは、平手さんも尊敬する人をちゃんと見つけられているんだなと安心しました(一体何目線なんだよ……笑)。

 

 NYLON JAPAN(ナイロン ジャパン) 2019年10 月号は絶賛発売中です。
(Kikka)
 

屋上で最後に平手友梨奈を突き飛ばすのは何者か 欅坂46「黒い羊」MV考察その2

 

 2月1日に解禁された欅坂46の「黒い羊」MV。公開から間もなく、1つ目の考察記事を公開したのですが、追記が増えてきたので新たな気付きなどを別記事にまとめます。

k-link.hatenablog.com

死が色濃い場所に現れる黒いフード

 「0分15秒ごろから映り込んでいるフードをかぶってしゃがみこむ人物についてどう思うか」というご質問をいただいたので、自分なりの解釈を記します。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 実は初見時、平手さんは彼岸花を渡す相手を探してさまよっている“死神”という説(平手友梨奈地獄少女説)について検討・考察していたのですが、繰り返し作品をみるうちに、この黒いフードの人物こそが死神なのかもしれないと考えるようになりました。

 この説を推す理由の一つに、1分26秒ごろにもこのフードの人物が登場するということがあります。平手さんが小林さんを抱きしめて死を思いとどまらせると、このフードの人物=死神が2人から離れていくのです。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 死を選ぶも成仏できない平手さん(僕)がどういう行動を取るのか。気付かれない距離で見張っているのではないでしょうか。

屋上で最後に平手友梨奈を突き飛ばすのは誰か

 「4分30秒ごろに登場する平手さんを最後に突き放す男性の存在についてどう思うか」というご質問も頂きました。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 この黒い上着の男性と平手さんが屋上で接触するまでの周囲の様子をよく見てみると、平手さんを中心として、左側に黒い上着の男性が、右側に白い上着の男性(※)が映っていることが分かります。

(※先の考察記事では平手さんを高い高いして実母のところへ運ぶ演出があることから、実父の可能性があると紹介していましたが、今回の考察では別の説を検討してみます)

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 この2人は周囲が2人1組のペアを作る中独立して存在し、それぞれ“こぶしを振り下ろすようなダンス”を踊っていることが分かります。

 またこの白い上着の男性は実母(と仮定します)とのダンスシーンに、黒い上着の男性は養父母(と仮定します)とのダンスシーンに登場し、それぞれ苦悩を表現するようなダンスを踊っているようです。
 こうした表現から、現時点ではこの白い服と黒い服の男性2人は「平手さんの心の内=感情=の化身」ではないかとも推測しています。なお寄せていただいた考察の中には「平手さんLGBT説においての自己理想像では」とのご意見もあり、大変面白い説だと思いました。

最後に

 一連の考察について様々なご意見・感想等を頂き、ありがとうございます。元演出屋の端くれということもあり、すぐに物語のバックグラウンドを考えすぎてしまうのですが、共感して頂けている方もいるようでホッとしました。

 今回のMVでは多種多様な表現が用いられています。その解釈について、どれが正解でどれが間違いなのかは分かりませんが、作り手が一生懸命に作ったのであろうこの作品を一生懸命に観察し、より理解を深めようとすることこそが、作り手への最大の感謝になるのではないかと考えています。

 引き続き、メンバーブログの更新などを見守りながら自分なりに考察したり、皆さんの解釈を楽しく拝見させていただければと思います。
Kikka


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【追記あり】平手友梨奈演じる“僕”は養子? 欅坂46「黒い羊」MVから読み解くメンバーの役割と謎

 欅坂46の「黒い羊」のMVが2月1日に解禁されました。各メンバーの役割、平手友梨奈さんは何者なのかなど、MVに張り巡らされた複雑なストーリーを一つずつ読み解いていこうと思います。

www.keyakizaka46.com

それぞれの役割

 まずはMVに登場する各メンバーに役割について考察していきましょう。

●両親に反抗する尾関梨香
 まず登場するのは両親がつきっきりで勉強を教えているらしい尾関家。しかし優等生だった尾関さんが突然、机の上にあった教科書の類を投げ捨ててどこかへ行ってしまいます。その後は夜の街に飛び出し、中華料理店の前で、文化の違いでいがみ合う人たち(?)を冷ややかに眺めていたりと、反抗期を表現するキャラクターのようです。

=2月4日23時35分追記=

 尾関梨香さんのブログが更新され、尾関さんの役割が「親からの過度な期待に応えられない大学生」であることが分かりました。

 

●男性にペール缶を投げつける不良少女、齋藤冬優花
 路地裏では不良風の齋藤冬優花さんが男性にパンチを浴びせ、ペール缶を投げつけています。さらにその後ろでは男性2人がもみ合っていますが、片方の男性は制帽を着用していることから、斎藤さんとその仲間(恋人?)の男性が何らかの悪事を働いたところを見つかってしまい、抵抗しているようにも見えます。

=2月2日17時35分追記=

 齋藤冬優花さんのブログが更新され、齋藤さんの役割が「貧乏な家庭で育ち、自分の両親を彼氏に馬鹿にされている女性」であったことが分かりました。齋藤さんが怒りをぶつけていた相手は恋人だったのですね。

●万引きがバレて白い目で見られる佐藤詩織
 コスメ用品を万引きしたらしい佐藤詩織さんは、店員さんに通報されて警察官に捕まっています。この時、お客たちが佐藤さんを白い目で見るのがなんともリアルです。また声をあげて抵抗する佐藤さんはきっと、本当はコスメが欲しかったのではなく、愛情を求めているのでしょう。

●孤立している鈴本美愉
 今時珍しいブラウン管のテレビをポツンと眺めているのは鈴本美愉さん。周囲には空き缶が転がっており、生活がすさんでいる様子がうかがえます。のちの階段のシーンでは鈴本さんが身にまとっているのはマタニティウェアに近い服であること、赤ん坊の人形が彼女の周りに現れることから、何らかの理由で子どもを出産or養育できなかった女性である可能性が高いとみられます。

●女性からの叱責に限界を迎える織田奈那
 バインダーを持ったスーツの女性から叱責される織田奈那さんは、耳をふさいで悲壮感漂う表情。パワハラを受けているような雰囲気で、本当に苦しそうです。

守屋茜家庭内暴力の被害者?それとも……
 立ち尽くす守屋茜さんにワイシャツ姿の男性が激しい口調で怒鳴りつけているシーン。ヒートアップした男性が守屋さんの肩を叩く場面をよく見ると、守屋さんの右頬にあざのようなものがあることから、家庭内暴力が連想されます。またこの男性は後に渡辺梨加さんのシーンで出てくるワイシャツの男性と似ていることから、守屋さんと男性は不倫の関係にあるのかもしれません。
 なお守屋さんについてはもう一つ別の仮説を立てることができますが、これについては後述します。

●いじめを受ける小林由依
 高校生の小林由依さんは、スクールカースト上位らしき女子高生たちにいじめられているようです。ロッカーには赤いスプレーで「Black Sheep」と書きなぐられているほか、突き飛ばされて転ぶなどの暴力的な被害も受けています。彼女と平手友梨奈さんとのシーンで印象的なのが、1分21秒から始まる平手さんと抱き合う場面です。小林さんが平手さんの彼岸花を強引に奪うのですが、平手さんは奪い返さずに小林さんを優しく抱きしめ、そっと彼岸花を自らの手に戻すのです。これは死の象徴である彼岸花を奪うことで短絡的に死を選ぼうとした小林さんを、平手さんがそっとなだめる様子を表現しているのでしょうか。

●仕事に追われる石森虹花
 デスクに座る石森虹花さんを、スマートフォンを手にした女性2人が監視しています。女性2人は何らかの仕事のあがりを待っているようですが、石森さんは頭を抱えて憔悴しきっている様子です。彼女については重大な役割を担っている可能性が高いため、後ほど詳しく解説します。

●浴槽で思いつめる小池美波
 ふらふらと危なっかしい足取りで歩きスマホをする小池美波さん。ニヒルな表情で自撮り(?)したかと思うと、すっと真顔になる様子から精神的に不安定であることが分かります。その後はバスタブの中で左手首を抑える仕草を見せるなど、リストカットを連想させる演出がひやりとします。一部では「MV内での職業はアイドルなのではないか」との声もあるようです。

=2月4日23時35分追記=

 小池美波さんのブログが更新され、小池さんの役割が「SNSで誰かからの暗い通知が届き、人生を諦める行動に出てしまう役」であることが分かりました。自分を強く責めてしまう人格のようです。

●売れないデザイナーの菅井友香
 「ご臨終です」と病院で父親を亡くした瞬間に立ち会っている菅井友香さん。「父親を亡くす売れないデザイナー」という役柄だそうですが、よく見るとお母さんも車いすで身体が不自由な様子。菅井さん自身の身なりもよくないことから、かなり生活環境が苦しいことがうかがえます。

●純真さを投げ捨てた渡邉理佐
 バーで男性2人に弄ばれている渡邉理佐さんですが、抵抗するわけでもなくどこか投げやりな様子。セットにあるピンク色の電飾「ARIADNE」は、ギリシア神話に登場する「とりわけて潔らかに聖い娘」を意味する名を持つ女神の名前なので、清らかだった女性が汚れていく様を描いているのかもしれません。

●禁断の恋に苦悩する土生瑞穂
 男性っぽいファッションの土生瑞穂さんはセーラー服の女子高生と共に並んで歩き、途中で肩を組む仕草を見せます。このシーンではLGBTを意識させる演出と共に、土生さんと女子高生という、未成年への禁断の恋というメッセージが感じ取れます。

●就職活動がうまく行かない長濱ねる
 書類を手に思い悩んでいる様子の長濱ねるさん。彼女が立つ階段には長濱さんと同様に、リクルートスーツの学生が列をなしており、そのうちの1人が階段から転げ落ちるシーンがあることや、仁王立ちの面接官らしき男性がいることから恐らく就職活動中の学生なのでしょう。社会の階段を自ら下り始めた長濱さんの無表情がなんとも悲しげです。

●人形のような表情で佇む長沢菜々香
 長濱さんが下っていく階段で佇む長沢菜々香さんは、人形のように表情を変えず心ここにあらずの様子。赤ん坊に関する演出が示唆される鈴本さんと一緒にいることなどから、ネグレクトが連想されます。長沢さんはネグレクトをしてしまった側なのか、自分自身が放置子なのか、意見が分かれそうですが、長沢さんの後ろには赤ん坊を抱く男性がいることから、育児に疲れた新米ママなのではないかと推測します。

●現実を直視できない渡辺梨加
 階段の上にいる渡辺梨加さんが小鳥をなでているのは「青い鳥症候群」の暗喩でしょうか。彼女の周囲には、ワイシャツ姿の男性とモコモコした服を着た女性、そしてチンピラ風の男性が立っていて、金銭トラブルや家庭環境の不和が連想されますが、渡辺さんはそうした現実を直視できないのかもしれません。

●ウサギの首を絞める(?)上村莉菜
 家族が口論する姿におびえる上村莉菜さん。ウサギを抱きしめる様子が大変かわいらしいですが、よく見るとそのウサギの首をギュッと絞めているようにも見えます。

平手友梨奈は何者なのか

●死んだのは誰だ

 人型の白いテープが地面に貼られた事件現場を報道陣や野次馬が取り囲むシーンから始まる本MV。白いテープの周りには赤い彼岸花が散っており、誰かがそこで亡くなったことを示しています。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 そんな様子を眺めているのが本MVの鍵を握る平手友梨奈さん。私は赤い彼岸花を手にする平手さんこそが、白いテープを貼られた場所で亡くなった人物ではないかと考えています。まずこのシーンに関連して重要になってくるのが、終盤の5分8秒ごろに聞こえる「誰か落ちてきた」というセリフと5分17秒ごろに聞こえる「バイバイ」という言葉。
 「バイバイ」に関しては明らかに平手さんの声であることや、この言葉と連動するように悔しそうにMVで目をつぶっていること、冒頭登場する平手さんの鼻や服が黒く汚れていることなどから飛び降り自殺を図ったことが示唆されているのではないかと考えています。

 またMVでは赤い彼岸花を持っているシーンと持っていないシーンが混在しており、2分42秒から3分33秒までの彼岸花を持っていないシーンは生前の苦悩を、それ以外の部分は死後の苦悩を描いているのではないかと推察しています。特に3分20秒からのレクイエムのようなメロディーが流れる中、祭壇に見立てた階段を上るシーンは魂の成仏を連想させるほか、子ども時代の平手さんが大人になった平手さんに彼岸花を手渡すシーンは彼岸花花言葉の一つでもある「転生」を描いているように見えます。

 

●僕だけでいい
 子ども時代の平手さんから彼岸花を受け取った後はしばし無音状態。平手さんの荒い呼吸音だけが続いたのちに声がオフの状態で平手さんが何らかの言葉を叫ぶ様子が描かれています。恐らくここで平手さんが叫んでいたのは「僕だけでいい」という言葉。そして屋上に立つメンバーやこれまでの登場人物の前に現れた平手さんは決心したかのように、死後の苦悩のシーンで十分に向き合えなかった者たちと向き合い、抱き合う事で理解を深めようとします。 

●屋上で平手友梨奈が突き飛ばす謎の女性の存在

 そんな平手さんが唯一、態度を豹変させるのが4分17秒に登場する女性の存在です。平手さんに駆け寄る女性に対し、平手さんはその腕を振り放すようにして女性を突き放します。床に倒れながらも再び抱き寄ろうとする女性に対し、平手さんは一瞬、歯を食いしばって怒りや憎しみのこもったまなざしを向けますが、女性の腕が再び平手さんの身体に触れるとその表情が一気に崩れ、「本当はずっと会いたかった」とでもいうようにしっかりと抱擁するのです。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000



 このシーン関連して、私が重要視しているのが2分24秒での平手さんの幼少期の楽しい思い出「誕生日会」です。大きなバースデーケーキを前に楽しそうな両親と平手さんが描かれていますが、その後ろには水色の服を着た亡霊のような女性。そして子どもの写真がいくつも飾られた写真たてを眺める若いカップルが立っていました。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 このシーンについて、もしも誕生日を祝っていた両親が平手さんにとっては義理の両親で、本当の両親は写真たてを眺めていた若いカップルの方だったとしたらどうでしょうか。大胆な仮説ですが、何らかの事情で平手さんを養育できなかった実の両親は平手さんを里子に出し、実子(水色の服を着た亡霊のような女性)に不満を持っていた夫婦が平手さんを引き取ったとすれば、平手さんが幼少期に両親がそこそこの年齢であっても不思議はありません。

 また終盤の屋上のシーンに関しても、4分15秒に平手さんを抱き上げる男性が実父で、子どもである平手さんにしてやれなかった「高い高い」をしてやり、実母が平手さんを抱きしめに来たとすれば、平手さんが一度は拒絶したものの深い抱擁をした謎が解けるような気がするのです。

 その後は実母との交流を知った養父に「育ててやった恩も忘れて、出ていけ!」と突き飛ばされるも、養母は平手さんが大切にしていた彼岸花を拾ってしっかり彼女を抱きしめ、そして送り出してやったのだとすれば、平手さんは知らず知らずのうちに周囲から受けていた愛情をやっと実感し、自分が選んだ道についてよく考え、「こんな思いをするのは僕だけでいい」と気付けるのかもしれません。

平手友梨奈はなぜ死を選んだのか

 ここからは平手さん演じる“僕”が死を選んだと仮定してお話を進めます。

(1)家庭内不和
 前述の通り、「平手さん里子説」が正解の場合、平手さんが成長と同時に育ての家族との不和を強めてしまった可能性が考えられます。MVに限ったことですが「全部僕のせいだ」には「僕さえ生まれなければ」というニュアンスが込められているのかもしれません。

(2)石森虹花との関係性
 今回のMVで最も謎深かったキャラクターは石森虹花さんでした。明らかに他の登場人物とは異なる距離感で平手さんと接しており、当初は「仲互いした親友」であったのかと推察していました。
 特に1分37秒の抱擁のシーンでは「やっと会えた」とでもいうかのように2人でガッチリと抱き合いつつも、「私は大丈夫だから(小池さんのところへ)行ってあげて」「わかった」というやり取りがあるようにも見え、2人の間にはかなり強い信頼関係がうかがえます。
 しかし「親友よりももっと深い関係だったのかもしれない」と気付かされたのが、1分47秒からのシーンです。このシーンでは1列目が「土生さんと女子高生が肩組み」、2列目が「石森さんと守屋さんが手をつないでいて、その横には守屋さんの肩に手を添える理佐さん」、3列目が「背の高い男性同士が肩組み」と複数人が隊列状で歩いており、一連の演出はLGBTに関連するものの可能性が高いとみられます。これにより前述の守屋さんのキャラクター設定については「父親にLGBTであることが発覚し、『頭がおかしいんじゃないか!』と叱責される娘」である可能性や、理佐さんがLGBTに理解を示すキャラクターであるという可能性が生まれました。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000



 また全シーンにおいて平手さんが比較的男性っぽいファッションであることからも、平手さんと石森さんが“親友以上恋人未満”の関係であった可能性は十分に考えられ、何らかのトラブルで石森さんが平手さんを置いて走って行ってしまう2分54秒からのシーンで、LGBTに理解のある理佐さんが平手さんを引き留めているのも、何か理由があってのことなのかもしれないと考えさせられます。なおこのすれ違いが死の要因の一つになっている可能性も考えられます。

 その後、屋上のシーンでは事実上2人を引き離してしまった理佐さんが平手さんを抱き上げながら石森さんの元へと運んで2人が再会。ほかの登場人物よりもしっかりと時間をかけた抱擁で愛情を確かめ合っているように見えました。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

主人公は誰だ

●白い羊のフリをした黒い羊たち
 今回のMVでは圧倒的に平手さんの出演シーンが多いため、平手さん演じる“僕”が主人公であるかのような印象を受ける人も多いかと思います。しかし実は彼女の周りには常に“白い羊のフリをした黒い羊”が映り込んでいます。このMVでの黒い羊は誰なのか、主人公が誰なのか、改めて考えさせられます。

 

●新宮良平監督のカモメの行方とさまざまな示唆
 今回のMVでもメガホンを取ったのは新宮良平監督でした。この大人数でワンカット撮影とは、すさまじいドライリハーサルがあったのだと思いますが、本当に本当に素晴らしいMVをありがとうございますとお伝えしたいです。もちろんMVには恒例のカモメらしき姿が確認できました。カモメ探しは楽しみにしている方が多いのであまり詳しくは述べませんが、“ある画面”に一瞬だけ映り込んでいます(多分)。
 また今回平手さんが多くの場面で抱えている彼岸花の本数はどうやら3本で、彼岸花には「また会う日を楽しみに」という意味もあるようです。なるほど、となりましたが深い意味があるのかどうかは分かりません。

 

 1月26日に本ブログにて「『全部僕のせいだ』は“黒い羊”の本心か 8thシングルから読み解く秋元康さんの残酷性と欅坂46の魅力」との考察記事を掲載しましたが、MVを見て、より理解が深まったような、謎が深まったような気がします。今回つづった考察には合っているところや間違っているところがあるかと思いますが、MVの演出解説が行われる日はやってくるのか。そしてテレビパフォーマンスはどんなものになるのか。まだまだ「黒い羊」の世界観を楽しむことができそうです。

 

=2月2日 16時30分追記=

 0分15秒ごろから映り込んでいるフードをかぶってしゃがみこむ人物についてどう思うか、というご質問をいただいたので自分なりの解釈を追記します。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 実は初見時、平手さんは彼岸花を渡す相手を探してさまよっている“死神”という説(平手友梨奈地獄少女説)について検討・考察していたのですが、繰り返し作品をみるうちに、この黒いフードの人物こそが死神なのかもしれないと考えるようになりました。

 この説を推す理由の一つに、1分26秒ごろにもこのフードの人物が登場するということがあります。平手さんが小林さんを抱きしめて死を思いとどまらせると、このフードの人物=死神が2人から離れていくのです。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 死を選ぶも成仏できない平手さん(僕)がどういう行動を取るのか。気付かれない距離で見張っているのではないでしょうか。

 


Kikka


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「全部僕のせいだ」は“黒い羊”の本心か 8thシングルから読み解く秋元康さんの残酷性と欅坂46の魅力

 欅坂46の8枚目となるシングル表題曲「黒い羊」が1月21日、「未来の鍵を握る学校 SCHOOL OF LOCK! 」(TOKYO FM系/以下、SOL)にて宇宙初フルオンエアされました。欅坂46史上、最もメッセージ性が強いともいえる本楽曲について、MV・歌詞公開前時点での考察を記録しておきたいと思います。

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8枚目シングルの発表画面(欅坂46公式サイトより)

●「黒い羊」を表題曲にすることの意味
 「黒い羊」を初めて耳にしたときの感想は「角を曲がった感じがした」でした。

  
 今回まず注目したいのは、これまで“インパクトの強い楽曲”を表題曲に、“メッセージ性の強い楽曲”をカップリング曲に、という傾向が強かった欅坂46が、「『黒い羊』を表題曲に持ってきた」ということ。これはグループとしての進化を表しているのか。それともある意味での決意表明なのか。単純に「良い曲」では片付けられない何かを感じます。

●作曲家は誰だ 
 雑踏音からのフォークソングを彷彿とさせる語り、楽曲中盤での“赦し”を得るような場面、そして最後は新しいドアを開けるかのような効果音となかなかトリッキーな構成の本楽曲。複雑なメロディー構成はまるで、1本のショートフィルムを見ているかのようであり、従来のアイドルソングでは感じられないような「起承転結」を提示されているように感じます。 


 そんなメロディーに突き刺さるような強い歌詞が重なると、さやわかとは言い難い聴後感になるかと思いきや、何度も聞き返したくなってしまうのは、30秒近くある終盤イントロの締め方が秀逸だからでしょうか。本当に不思議です。 


 そんな名曲を作り上げたのは誰なのでしょうか。冒頭のどこか寂し気で儚いピアノイントロ、そして中盤からの激しいベース音は「エキセントリック」「避雷針」「角を曲がる」の系統に近い、むしろ同じ系譜のようにも感じられます。そのため現時点では本楽曲の作曲を手掛けたのは「ナスカ」のお二人ではないかと推測しています。なおネット上でも現時点(1月26日時点)では「ナスカ」の名を挙げる方が多いようです。

●「Knock」「Know」「No」――「全部僕のせいだ」は黒い羊の本心か 

 本楽曲最大の衝撃ポイントは平手友梨奈さんが絞り出すような声で紡ぐ「全部僕のせいだ」というフレーズ。聞くたびに胸が締め付けられるような苦しい場面ですが、私は直前のフレーズが何なのかによって全く意味合いが異なるのでは? と考えています。

 可能性があるのは「Knock」「Know」「No」のいずれか。私なりに解釈したそれぞれの説に触れていきます。

(1)Knock Knock No No 全部僕のせいだ 説
 白い羊たちが孤立して閉じこもる黒い羊を救おうとドアを“Knock”しに来る。しかし行き場がなく、急かされたことで白い羊たちにも追い詰められたと感じた黒い羊は「みんなの元へは行けないよ」と(“No”と)拒絶し、こうした状況を作ったのは“全部僕のせいだ”とこぼす。

(2)Knock Knock Know Know 全部僕のせいだ 説
 白い羊たちが孤立して閉じこもる黒い羊のドアを“Knock”しに来る。このとき、白い羊たちの善意を理解している黒い羊たちは「わかってる……わかってるよ」と自分を責めながら、“全部僕のせいだ”と叫ぶ。

(3)Knock Knock Know No 全部僕のせいだ  説

 白い羊たちが孤立して閉じこもる黒い羊のドアを“Knock”しに来る。そのとき白い羊たちは黒い羊に「君の気持はわかってるよ」と黒い羊を思いやるが、黒い羊は「(自分の気持ちなんかみんなに)わかりっこないよ」と思いつつも、白い羊に自分の気持ちが伝わらないのは“全部僕のせいだ”とこぼす。

(4)No No No No 全部僕のせいだ 説 

 白い羊たちが黒い羊に「ちがう、こうなったのはあなたのせいなんかじゃない」と群れを成して伝えに来るが、黒い羊は「そんなわけがない」“全部僕のせいだ”とこぼす。

 私が最も推しているのは「Knock Knock No No」説ですが、直前のフレーズによって、「全部僕のせいだ」が黒い羊の本心から出た言葉なのか、それとも白い羊たちが図らずも黒い羊を追い詰めて言わせてしまった言葉なのか、その解釈が変わるのは非常に面白い点だと思いました。 

 一方で平手友梨奈さんにこのフレーズを歌わせる「秋元康さんは本当に酷な人だな」とも思いました。2018年は平手さんにとって非常に苦しい1年だったのではと感じている人は多いはず。そんな彼女こそが“黒い羊”であると連想できる歌詞を今、このタイミングであてることにどういった意図があるのか、何を伝えようとしているのかは秋元さんやメンバーたち、当事者にしか分かりません。しかし、そのメッセージを伝えようとするあまり、メンバーたちの心に傷がつくのではと余計な心配をしてしまうのもまた事実なのです。

 

●聴き手は白い羊であり、黒い羊

 聞けば聞くほどに心がえぐられるようで苦しくなるのに、それでも「黒い羊」をまた聴きたくなってしまうのは、残酷さの中に美しさを感じてしまうのは、聴き手が無意識に目配せしてる白い羊だからなのでしょうか。そして聴き手である白い羊も心の中にひっそりと黒い羊を飼っているからなのでしょうか。

 

 しばらくはMV公開を楽しみに待ちつつ、もう少し考察を続けたいと思います。

Kikka

 

グランジ4年ぶりの単独LIVEを見に行ったら、「LIGHT & NATURE」という猛毒に侵された話

11月18日にグランジの4年ぶりとなる単独ライブ「LIGHT & NATURE」を観に行った。公演から数日経ってもグランジ熱に侵されているので、この狂気の熱量を記録しておきたいと思う。

 

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公演当日開場2時間前。渋谷ヒカリエで合流した私と友人は、ちょっとクセの強い楽屋見舞い(トリュフ味がうまいスナック菓子)を片手に電車に揺られていた。

 

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友人も私もお笑い好きで、めちゃイケ世代。お笑いライブを観に行った経験もあるが、「ここ最近は観に行っていないね」「そもそも単独ライブってあんまり観たことないや」なんて話をしていたら新宿に着いていた。

 


「ほぇーここがルミネtheよしもとか」

「東京のルミネ来たことなかった」

 


とかくっちゃべりつつ、受付のお姉さんにお菓子を渡して頂けるようお願いしたらとても感じよく対応してくれた。

その後一旦会場を出て、近くのケンタッキーフライドチキンのフォレサンドで腹ごしらえし、いざ会場へ。

 

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混み合っている受付の近くでお笑いトリオ「パップコーン」の芦沢ムネトさん(SOLのあしざわ教頭)や私が勝手に神と崇め奉っているナスカのお2人(欅坂46「エキセントリック」や乃木坂46「ジコチューで行こう!」の作曲を担当されている。とてもお優しく多分本当に神)の姿をお見かけしたので、ご挨拶をさせていただいた。

 


職業柄こういうところだけは目ざといというか図々しいなと思いつつ、「神とお話ししてしまった」と内心Hi! Hi! Hi! Hi! Hi! ハイテンション状態で着席。ぶっちゃけナスカのお2人と何を話したか覚えていないレベル。それぐらいど緊張の挨拶だった。例えるならば映画「響」の「あなたの作品好き!」状態のひーちゃんだが、あれは平手友梨奈さんがかわいいから成立しているのであって、野性のナスカファンのアラサー女がやると結構ヤバイ。申し訳ないことをしたと思うが、ナスカさんの素晴らしさについては別の機会に改めて語りたいと思う。

 


そんなことはさておき、程なくして会場に軽妙な音楽が流れ始める。神(ナスカさん)が作曲されたオープニング曲である。何このワクワク感。危なっかしい計画にも通じるようなテンポ感で「永遠に聞いていられるわ」と聞き入っていたら、舞台上に女装した五明拓弥さんがいた。グランジ4年ぶりの単独ライブが幕を開けたのである。

 


オープニングコントは遠山大輔さん扮するダメな弟を持つ姉(五明さん)が、勝手に芸能事務所へ履歴書を送るネタ「アイウエオ企画」。業界人なら知っていると思うが、高橋英樹さん、高橋真麻さん親子が所属する実在の芸能事務所「アイウエオ企画」を絡めたネタである。一発目からとんでもねぇものをぶち込んできたと思っていたのも束の間、畳み掛けるようなボケツッコミがくどくない感じで展開されていく。面白い。

 


特筆すべきは五明さんの演技力で、あの顔、あの高身長なのに途中から三十路女に見えてくるのだから恐ろしい。あと五明さん痩せた?

 


その後登場する大さん(椿鬼奴さんの旦那さん)が完璧に高橋英樹さんになりきっていたのもよかった。見た目は大さんでも、私たちの目には高橋英樹がいるようにしか見えなかった。

「これがグランジですよ」と来場者をグランジワールドに誘い込みつつ、「あーもうちょっとだけ観たい!」と思わせる絶妙な尺で1本目のネタが終わった。物事なんでもちょっと足りないぐらいが丁度いいのかもしれない。

 


そして超スタイリッシュなオープニングVTRがあって2本目のネタ「すぐ帰ろうとする」

がスタート。定番のすれ違いコントにリズムネタ要素をプラスした作品で、大さんのぶっ飛び変人ぶりとそれに応戦する五明さんのいかれっぷり、ただただドン引きして役に立たない遠山さんのクソ彼氏ぶりというカオスな構図がどこを切り取っても面白おかしかった。この世界観はグランジにしか作れないと思った。あと重ねて音楽が最高だった。

 


つなぎVTRではそれぞれが狂った意気込みを語る中、大さんはただ一人奥さんである椿鬼奴さんのNewアルバムを買ってくれるようにお客さんにお願いしていた。根拠はないがMステで鬼奴さんの歌声を聴く日は遠くないなと思った。ラジオリスナーのみんなは是非鬼奴さんのリクエストしてあげてほしい。

 


その後は「入ってんじゃん」「カントリーロード」「朗読会」「チンコ卓球」と毛色の違うネタが展開されていく。

一押しは「カントリーロード」で、五明さんと大さん扮する老夫婦が名曲「カントリーロード」の音楽をバックに自転車を漕いでいるというなんとも爽やかな世界観で始まったかと思いきや、遠山さんとの出会いをきっかけにこの老夫婦のとんでもない過去が明らかになっていくというもの。

 

 

セリフはほぼなく、英語に空耳するような日本語で説明があるのみ。それでいて舞台上にいる演者の晴れやかな表情やスライドに映し出される写真の哀愁がなんとも面白おかしく、思わず吹き出してしまう。グランジ、こういうのもできるのか。と感じさせる1作だった。個人的にはこれが一番好き。

 


今回は暗転の間に展開されるVTRもとても面白かった。特にフジテレビの人気ドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」のパロディー「校長、39歳の一人暮らし」は前編後編に分けられた力作で、SOLの収録中に欅坂愛を語るとーやま校長や、ラジオ仕事終わりにライブDVDを観ながらひたすらセブン-イレブンのスイートポテトとホットビスケットを過食する遠山大輔39歳の日常が描かれている。

 


余談だが、以前本家の番組の総合プロデューサーを取材したことがあるだけに、冒頭から肩の震えが止まらない。無駄に細かい要素を寄せてきているのでYouTubeなどに無断転載すればきっと本家と勘違いされるクオリティー(褒め言葉)。

参考:なぜ“北九州監禁殺人事件の息子”に取材できたのか 「ザ・ノンフィクション」チーフプロデューサーが語る、踏み込める理由

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1711/15/news086.html

 


またこのVTR収録が行われたのは10/31のハロウィンだったらしく、写り込んでいるニュースZEROではキャスターが「渋谷センター街で火災」のニュースを取り上げていた。

 


10/31は私がまさに渋谷センター街でハロウィンの取材をしていた日で、取材中にそのビル火災が発生したので猛ダッシュ渋谷センター街を駆け抜けた日でもある。もうなんだか色々な感情が相まって笑いが止まらない。隣を見たら友人もビル火災のくだりで「(例の火事じゃん!笑)」と私を指差して笑っていた。火災は不幸なことで笑うのは不謹慎と分かっている。しかし多分この瞬間グランジのネタと関係ないところで笑っているのは私たちなんだろうなと思ったら余計に面白かった。ごめんなさい。

 


そしてアンケートタイムを経て最後のネタ「サスペンス in ハワイ」に突入。マリッジブルーをテーマにハワイでの結婚式に波乱が巻き起こるカップルと周囲の人々を描いたネタなのだが、新郎新婦はもちろん、新郎の友人、新婦の友人、新婦の弟、新郎の母ととにかく登場人物が多い。

 


しかしグランジはご存知の通り3人組。出番のたびにカツラをかぶったり衣装を大替えするのは難しい中、どうしたか。彼らは今回のライブのイメージカラーとなっている「青」「黄色」のシャツを羽織ることでこの問題を解決してみせた。

 


黄色いシャツなら女性、青いシャツなら男性と今本人が演じているキャラクターが男性なのか女性なのかを視覚的に分かりやすくすることで、お客が「今誰やってるんだっけ」と考える手間を取り除いたのだ。これにはただただ驚いた。コントに演劇的なテクニックを持ってくるのはやはり彼らが熟練したコント師だからなのだと感じた。

 


最後の最後までしっかりと笑わせてくれたグランジの約2時間のライブが終わった。会場の外でアンケートを書いているとずらーっと写メ会待ち(グッズを買うと一緒に写メを撮らせてもらえる)のお客さんが長い列を作っていた。友人と何が面白かったかなどを語り合う中2人とも共通していたのが「2時間も経っていたのか」ということだった。

 


これまで時間を忘れるほど熱中してコントを見たことはなかったし、失礼を重々承知で言うと、実はグランジがここまで面白いと思っていなかった。というのも私は過去にお笑い賞レースの仕事に携わっていたことがあり、グランジのネタをいくつか見たことがあったからだ。

 


藤崎マーケットや2700といったリズム系漫才師が人気を博していた2000年代、オールザッツ漫才などでは和牛、スーパーマラドーナspan!ウーマンラッシュアワーらと共にグランジ足切りラインで消えていた。

 


しかし足切りにはかかっても得票ポイントは少なくなく、好みが分かれているというよりは決定打にかけているのではないかというのが当時の正直な心境だった。

 


それから時間が流れ、私はテレビマンを辞め、視聴者側になった。そしてふと流れていたコント番組でグランジを見かけた。法要に関するネタをやっているグランジはめちゃくちゃ面白かったし、何より10年前と変わらぬ情熱でコントに挑んでいる3人はかっこよかった。この人たちのライブが観たいと思ったものの、単独ライブはここ4年開催されておらず勿体無さを感じていた。

 


そんな折訪れた単独ライブ開催の機会。今回劇場に足を運ぶ機会を得て本当に良かったと思う。そして最高の2時間を汗だくで届けてくれたグランジに声を大にして「面白かった」と伝えたい。本当に面白かった。

 

バラードもあって、ロックもあって、ラップもある。「LIGHT & NATURE」はグランジ4年ぶりのアルバムのようなライブだったのかもしれない。アルバムは聞き込んでこそアルバム。ぜひ映像化を期待したい。


東京から岡山にフライトする1時間20分で書きあげた感想の為、色々と読みづらいところもあるかもしれないが、とにかく記録に残すことが大事と筆を置く。