【追記あり】平手友梨奈演じる“僕”は養子? 欅坂46「黒い羊」MVから読み解くメンバーの役割と謎

 欅坂46の「黒い羊」のMVが2月1日に解禁されました。各メンバーの役割、平手友梨奈さんは何者なのかなど、MVに張り巡らされた複雑なストーリーを一つずつ読み解いていこうと思います。

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それぞれの役割

 まずはMVに登場する各メンバーに役割について考察していきましょう。

●両親に反抗する尾関梨香
 まず登場するのは両親がつきっきりで勉強を教えているらしい尾関家。しかし優等生だった尾関さんが突然、机の上にあった教科書の類を投げ捨ててどこかへ行ってしまいます。その後は夜の街に飛び出し、中華料理店の前で、文化の違いでいがみ合う人たち(?)を冷ややかに眺めていたりと、反抗期を表現するキャラクターのようです。

=2月4日23時35分追記=

 尾関梨香さんのブログが更新され、尾関さんの役割が「親からの過度な期待に応えられない大学生」であることが分かりました。

 

●男性にペール缶を投げつける不良少女、齋藤冬優花
 路地裏では不良風の齋藤冬優花さんが男性にパンチを浴びせ、ペール缶を投げつけています。さらにその後ろでは男性2人がもみ合っていますが、片方の男性は制帽を着用していることから、斎藤さんとその仲間(恋人?)の男性が何らかの悪事を働いたところを見つかってしまい、抵抗しているようにも見えます。

=2月2日17時35分追記=

 齋藤冬優花さんのブログが更新され、齋藤さんの役割が「貧乏な家庭で育ち、自分の両親を彼氏に馬鹿にされている女性」であったことが分かりました。齋藤さんが怒りをぶつけていた相手は恋人だったのですね。

●万引きがバレて白い目で見られる佐藤詩織
 コスメ用品を万引きしたらしい佐藤詩織さんは、店員さんに通報されて警察官に捕まっています。この時、お客たちが佐藤さんを白い目で見るのがなんともリアルです。また声をあげて抵抗する佐藤さんはきっと、本当はコスメが欲しかったのではなく、愛情を求めているのでしょう。

●孤立している鈴本美愉
 今時珍しいブラウン管のテレビをポツンと眺めているのは鈴本美愉さん。周囲には空き缶が転がっており、生活がすさんでいる様子がうかがえます。のちの階段のシーンでは鈴本さんが身にまとっているのはマタニティウェアに近い服であること、赤ん坊の人形が彼女の周りに現れることから、何らかの理由で子どもを出産or養育できなかった女性である可能性が高いとみられます。

●女性からの叱責に限界を迎える織田奈那
 バインダーを持ったスーツの女性から叱責される織田奈那さんは、耳をふさいで悲壮感漂う表情。パワハラを受けているような雰囲気で、本当に苦しそうです。

守屋茜家庭内暴力の被害者?それとも……
 立ち尽くす守屋茜さんにワイシャツ姿の男性が激しい口調で怒鳴りつけているシーン。ヒートアップした男性が守屋さんの肩を叩く場面をよく見ると、守屋さんの右頬にあざのようなものがあることから、家庭内暴力が連想されます。またこの男性は後に渡辺梨加さんのシーンで出てくるワイシャツの男性と似ていることから、守屋さんと男性は不倫の関係にあるのかもしれません。
 なお守屋さんについてはもう一つ別の仮説を立てることができますが、これについては後述します。

●いじめを受ける小林由依
 高校生の小林由依さんは、スクールカースト上位らしき女子高生たちにいじめられているようです。ロッカーには赤いスプレーで「Black Sheep」と書きなぐられているほか、突き飛ばされて転ぶなどの暴力的な被害も受けています。彼女と平手友梨奈さんとのシーンで印象的なのが、1分21秒から始まる平手さんと抱き合う場面です。小林さんが平手さんの彼岸花を強引に奪うのですが、平手さんは奪い返さずに小林さんを優しく抱きしめ、そっと彼岸花を自らの手に戻すのです。これは死の象徴である彼岸花を奪うことで短絡的に死を選ぼうとした小林さんを、平手さんがそっとなだめる様子を表現しているのでしょうか。

●仕事に追われる石森虹花
 デスクに座る石森虹花さんを、スマートフォンを手にした女性2人が監視しています。女性2人は何らかの仕事のあがりを待っているようですが、石森さんは頭を抱えて憔悴しきっている様子です。彼女については重大な役割を担っている可能性が高いため、後ほど詳しく解説します。

●浴槽で思いつめる小池美波
 ふらふらと危なっかしい足取りで歩きスマホをする小池美波さん。ニヒルな表情で自撮り(?)したかと思うと、すっと真顔になる様子から精神的に不安定であることが分かります。その後はバスタブの中で左手首を抑える仕草を見せるなど、リストカットを連想させる演出がひやりとします。一部では「MV内での職業はアイドルなのではないか」との声もあるようです。

=2月4日23時35分追記=

 小池美波さんのブログが更新され、小池さんの役割が「SNSで誰かからの暗い通知が届き、人生を諦める行動に出てしまう役」であることが分かりました。自分を強く責めてしまう人格のようです。

●売れないデザイナーの菅井友香
 「ご臨終です」と病院で父親を亡くした瞬間に立ち会っている菅井友香さん。「父親を亡くす売れないデザイナー」という役柄だそうですが、よく見るとお母さんも車いすで身体が不自由な様子。菅井さん自身の身なりもよくないことから、かなり生活環境が苦しいことがうかがえます。

●純真さを投げ捨てた渡邉理佐
 バーで男性2人に弄ばれている渡邉理佐さんですが、抵抗するわけでもなくどこか投げやりな様子。セットにあるピンク色の電飾「ARIADNE」は、ギリシア神話に登場する「とりわけて潔らかに聖い娘」を意味する名を持つ女神の名前なので、清らかだった女性が汚れていく様を描いているのかもしれません。

●禁断の恋に苦悩する土生瑞穂
 男性っぽいファッションの土生瑞穂さんはセーラー服の女子高生と共に並んで歩き、途中で肩を組む仕草を見せます。このシーンではLGBTを意識させる演出と共に、土生さんと女子高生という、未成年への禁断の恋というメッセージが感じ取れます。

●就職活動がうまく行かない長濱ねる
 書類を手に思い悩んでいる様子の長濱ねるさん。彼女が立つ階段には長濱さんと同様に、リクルートスーツの学生が列をなしており、そのうちの1人が階段から転げ落ちるシーンがあることや、仁王立ちの面接官らしき男性がいることから恐らく就職活動中の学生なのでしょう。社会の階段を自ら下り始めた長濱さんの無表情がなんとも悲しげです。

●人形のような表情で佇む長沢菜々香
 長濱さんが下っていく階段で佇む長沢菜々香さんは、人形のように表情を変えず心ここにあらずの様子。赤ん坊に関する演出が示唆される鈴本さんと一緒にいることなどから、ネグレクトが連想されます。長沢さんはネグレクトをしてしまった側なのか、自分自身が放置子なのか、意見が分かれそうですが、長沢さんの後ろには赤ん坊を抱く男性がいることから、育児に疲れた新米ママなのではないかと推測します。

●現実を直視できない渡辺梨加
 階段の上にいる渡辺梨加さんが小鳥をなでているのは「青い鳥症候群」の暗喩でしょうか。彼女の周囲には、ワイシャツ姿の男性とモコモコした服を着た女性、そしてチンピラ風の男性が立っていて、金銭トラブルや家庭環境の不和が連想されますが、渡辺さんはそうした現実を直視できないのかもしれません。

●ウサギの首を絞める(?)上村莉菜
 家族が口論する姿におびえる上村莉菜さん。ウサギを抱きしめる様子が大変かわいらしいですが、よく見るとそのウサギの首をギュッと絞めているようにも見えます。

平手友梨奈は何者なのか

●死んだのは誰だ

 人型の白いテープが地面に貼られた事件現場を報道陣や野次馬が取り囲むシーンから始まる本MV。白いテープの周りには赤い彼岸花が散っており、誰かがそこで亡くなったことを示しています。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 そんな様子を眺めているのが本MVの鍵を握る平手友梨奈さん。私は赤い彼岸花を手にする平手さんこそが、白いテープを貼られた場所で亡くなった人物ではないかと考えています。まずこのシーンに関連して重要になってくるのが、終盤の5分8秒ごろに聞こえる「誰か落ちてきた」というセリフと5分17秒ごろに聞こえる「バイバイ」という言葉。
 「バイバイ」に関しては明らかに平手さんの声であることや、この言葉と連動するように悔しそうにMVで目をつぶっていること、冒頭登場する平手さんの鼻や服が黒く汚れていることなどから飛び降り自殺を図ったことが示唆されているのではないかと考えています。

 またMVでは赤い彼岸花を持っているシーンと持っていないシーンが混在しており、2分42秒から3分33秒までの彼岸花を持っていないシーンは生前の苦悩を、それ以外の部分は死後の苦悩を描いているのではないかと推察しています。特に3分20秒からのレクイエムのようなメロディーが流れる中、祭壇に見立てた階段を上るシーンは魂の成仏を連想させるほか、子ども時代の平手さんが大人になった平手さんに彼岸花を手渡すシーンは彼岸花花言葉の一つでもある「転生」を描いているように見えます。

 

●僕だけでいい
 子ども時代の平手さんから彼岸花を受け取った後はしばし無音状態。平手さんの荒い呼吸音だけが続いたのちに声がオフの状態で平手さんが何らかの言葉を叫ぶ様子が描かれています。恐らくここで平手さんが叫んでいたのは「僕だけでいい」という言葉。そして屋上に立つメンバーやこれまでの登場人物の前に現れた平手さんは決心したかのように、死後の苦悩のシーンで十分に向き合えなかった者たちと向き合い、抱き合う事で理解を深めようとします。 

●屋上で平手友梨奈が突き飛ばす謎の女性の存在

 そんな平手さんが唯一、態度を豹変させるのが4分17秒に登場する女性の存在です。平手さんに駆け寄る女性に対し、平手さんはその腕を振り放すようにして女性を突き放します。床に倒れながらも再び抱き寄ろうとする女性に対し、平手さんは一瞬、歯を食いしばって怒りや憎しみのこもったまなざしを向けますが、女性の腕が再び平手さんの身体に触れるとその表情が一気に崩れ、「本当はずっと会いたかった」とでもいうようにしっかりと抱擁するのです。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000



 このシーン関連して、私が重要視しているのが2分24秒での平手さんの幼少期の楽しい思い出「誕生日会」です。大きなバースデーケーキを前に楽しそうな両親と平手さんが描かれていますが、その後ろには水色の服を着た亡霊のような女性。そして子どもの写真がいくつも飾られた写真たてを眺める若いカップルが立っていました。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 このシーンについて、もしも誕生日を祝っていた両親が平手さんにとっては義理の両親で、本当の両親は写真たてを眺めていた若いカップルの方だったとしたらどうでしょうか。大胆な仮説ですが、何らかの事情で平手さんを養育できなかった実の両親は平手さんを里子に出し、実子(水色の服を着た亡霊のような女性)に不満を持っていた夫婦が平手さんを引き取ったとすれば、平手さんが幼少期に両親がそこそこの年齢であっても不思議はありません。

 また終盤の屋上のシーンに関しても、4分15秒に平手さんを抱き上げる男性が実父で、子どもである平手さんにしてやれなかった「高い高い」をしてやり、実母が平手さんを抱きしめに来たとすれば、平手さんが一度は拒絶したものの深い抱擁をした謎が解けるような気がするのです。

 その後は実母との交流を知った養父に「育ててやった恩も忘れて、出ていけ!」と突き飛ばされるも、養母は平手さんが大切にしていた彼岸花を拾ってしっかり彼女を抱きしめ、そして送り出してやったのだとすれば、平手さんは知らず知らずのうちに周囲から受けていた愛情をやっと実感し、自分が選んだ道についてよく考え、「こんな思いをするのは僕だけでいい」と気付けるのかもしれません。

平手友梨奈はなぜ死を選んだのか

 ここからは平手さん演じる“僕”が死を選んだと仮定してお話を進めます。

(1)家庭内不和
 前述の通り、「平手さん里子説」が正解の場合、平手さんが成長と同時に育ての家族との不和を強めてしまった可能性が考えられます。MVに限ったことですが「全部僕のせいだ」には「僕さえ生まれなければ」というニュアンスが込められているのかもしれません。

(2)石森虹花との関係性
 今回のMVで最も謎深かったキャラクターは石森虹花さんでした。明らかに他の登場人物とは異なる距離感で平手さんと接しており、当初は「仲互いした親友」であったのかと推察していました。
 特に1分37秒の抱擁のシーンでは「やっと会えた」とでもいうかのように2人でガッチリと抱き合いつつも、「私は大丈夫だから(小池さんのところへ)行ってあげて」「わかった」というやり取りがあるようにも見え、2人の間にはかなり強い信頼関係がうかがえます。
 しかし「親友よりももっと深い関係だったのかもしれない」と気付かされたのが、1分47秒からのシーンです。このシーンでは1列目が「土生さんと女子高生が肩組み」、2列目が「石森さんと守屋さんが手をつないでいて、その横には守屋さんの肩に手を添える理佐さん」、3列目が「背の高い男性同士が肩組み」と複数人が隊列状で歩いており、一連の演出はLGBTに関連するものの可能性が高いとみられます。これにより前述の守屋さんのキャラクター設定については「父親にLGBTであることが発覚し、『頭がおかしいんじゃないか!』と叱責される娘」である可能性や、理佐さんがLGBTに理解を示すキャラクターであるという可能性が生まれました。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000



 また全シーンにおいて平手さんが比較的男性っぽいファッションであることからも、平手さんと石森さんが“親友以上恋人未満”の関係であった可能性は十分に考えられ、何らかのトラブルで石森さんが平手さんを置いて走って行ってしまう2分54秒からのシーンで、LGBTに理解のある理佐さんが平手さんを引き留めているのも、何か理由があってのことなのかもしれないと考えさせられます。なおこのすれ違いが死の要因の一つになっている可能性も考えられます。

 その後、屋上のシーンでは事実上2人を引き離してしまった理佐さんが平手さんを抱き上げながら石森さんの元へと運んで2人が再会。ほかの登場人物よりもしっかりと時間をかけた抱擁で愛情を確かめ合っているように見えました。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

主人公は誰だ

●白い羊のフリをした黒い羊たち
 今回のMVでは圧倒的に平手さんの出演シーンが多いため、平手さん演じる“僕”が主人公であるかのような印象を受ける人も多いかと思います。しかし実は彼女の周りには常に“白い羊のフリをした黒い羊”が映り込んでいます。このMVでの黒い羊は誰なのか、主人公が誰なのか、改めて考えさせられます。

 

●新宮良平監督のカモメの行方とさまざまな示唆
 今回のMVでもメガホンを取ったのは新宮良平監督でした。この大人数でワンカット撮影とは、すさまじいドライリハーサルがあったのだと思いますが、本当に本当に素晴らしいMVをありがとうございますとお伝えしたいです。もちろんMVには恒例のカモメらしき姿が確認できました。カモメ探しは楽しみにしている方が多いのであまり詳しくは述べませんが、“ある画面”に一瞬だけ映り込んでいます(多分)。
 また今回平手さんが多くの場面で抱えている彼岸花の本数はどうやら3本で、彼岸花には「また会う日を楽しみに」という意味もあるようです。なるほど、となりましたが深い意味があるのかどうかは分かりません。

 

 1月26日に本ブログにて「『全部僕のせいだ』は“黒い羊”の本心か 8thシングルから読み解く秋元康さんの残酷性と欅坂46の魅力」との考察記事を掲載しましたが、MVを見て、より理解が深まったような、謎が深まったような気がします。今回つづった考察には合っているところや間違っているところがあるかと思いますが、MVの演出解説が行われる日はやってくるのか。そしてテレビパフォーマンスはどんなものになるのか。まだまだ「黒い羊」の世界観を楽しむことができそうです。

 

=2月2日 16時30分追記=

 0分15秒ごろから映り込んでいるフードをかぶってしゃがみこむ人物についてどう思うか、というご質問をいただいたので自分なりの解釈を追記します。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 実は初見時、平手さんは彼岸花を渡す相手を探してさまよっている“死神”という説(平手友梨奈地獄少女説)について検討・考察していたのですが、繰り返し作品をみるうちに、この黒いフードの人物こそが死神なのかもしれないと考えるようになりました。

 この説を推す理由の一つに、1分26秒ごろにもこのフードの人物が登場するということがあります。平手さんが小林さんを抱きしめて死を思いとどまらせると、このフードの人物=死神が2人から離れていくのです。

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公式サイトより(http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/?ima=0000

 死を選ぶも成仏できない平手さん(僕)がどういう行動を取るのか。気付かれない距離で見張っているのではないでしょうか。

 


Kikka


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